Coppermine ClockUp

0.18ミクロンプロセスで製造されたPentiumIII。
最大の特徴であるL2キャッシュのコア統合と、プロセスの微細化による高クロック性を検証してみます。


《目次》
・L2キャッシュ検証
・ClockUp検証
・主要ベンチ
  HDBENCH2.6-CPU
  CPUMark99
  FPUWinMark
  SuperPI(104万桁)
  CORTEST/99

・結論


《関連記事》
・4TypeCPU・L1、L2キャッシュスピード比較

(CoppermineのL2がAthlonのL1に匹肩)
・CoppermineはMASKにご注意
(2.0Vコアの要領では出来ません)
・600E@800成功のチェックポイント by narikenさん
(narikenさんの人柱メールレポート第二弾)
・カッパ600E@800安定化まで by narikenさん
800MHz安定までのnarikenさんの体験記)


《環境》

マザーボード:Abit BF6(Abit BF6 ClockUp
その他は、
わたしの環境(^^;

《L2キャッシュ検証》

L2キャッシュのスピードとサイズの関係について、こんな話しがあります。
「L2をコア等速とすることで、256KBの容量でも外付け1MBと同等以上の効果がある」
以前、256KBのキャッシュをコア等速で動作させたPentiumPro発表でのIntelのコメントです。
当時、PentiumProが幻となった133MHz版(2倍速)の発売を予定したと思われることから、このコメントは、

「L2のスピード倍増は、サイズ倍増の2倍の効果を持つ」と解釈できます。

実際サイズに関しては、全データが収まってしまうほど大きくなると、それ以上大きくしても効果が出ないので
この限りではありませんが、そのままCeleronとKatmai PentiumIIIの関係に当てはまる興味深い公式だと思います。



L2の効果にかかわる要素

CPU

L2容量

L2動作クロック

バンド幅

推定バースト転送クロック

Coppermine PentiumIII 

256KB

コア等速

256bit

2 = 2

Katmai PentiumIII

512KB

コアの2分の1クロック

64bit

3-2-2-2 = 9

Celeron

128KB

コア等速

64bit

2-1-1-1 = 5


L2のスピードには動作クロックの他にバンド幅が関係し、バースト転送に必要なクロック数が決まります。
CoppermineのL2転送スピードは、Katmaiの4.5倍、Celeronの2.5倍となり、先の公式に当てはめれば、
Katmaiで512KBx4.5x2=
4.5MB、Celeronで128KBx2.5x2=640KB相当の効果ということになります。
(この件に関しては、独自考察なので、事実と異なるかもしれません)



L2の検証

実際、どれだけの速度差があるのか、CORTEST/99で検証してみます。
L2の速度差を見るため、コア速度を504MHzに統一し計測。メインメモリはFSBが異なるので度外視します。
64KB値に注目します。

Coppermine PentiumIII 600E@504

CMCOR504.gif

Katmai PentiumIII 450@504
P35-CORS.gif

Celeron 300A@504
C5-CORS.gif


64KB値の速度差
CMCOR.gif

read速度は同じですが、write速度には劇的な差があり、先の机上考察をほぼ実証する結果です。
やはり、
CoppermineのL2はスペック通りの速度と思ってよさそうです。

このテストから、他にわかることががあります。
L1の速度に差が無いことと、Katmai PentiumIIIとCeleronのメインメモリのアクセス速度差です。
L1については、3者同等と見てよさそうです。
メインメモリ度外視といっても、この2者は倍率4.5倍、FSB112MHzで共通しています。
にもかかわらず、Celeronの方がかなり速いのは、Katmaiのメモリアクセスに問題があるからなのかも知れません。

Coppermineについては倍率6倍、FSB84MHzの数字なので、1.33倍掛けで見ると3者で最高の速度になりそうです。

L1を含めAthlonと比較する4TypeCPU・L1、L2キャッシュスピード比較

《ClockUp検証》

スロット版Coppermineの基準コア電圧は1.65Vです。(ご参考:Coppermineはマスクにご注意
Athlonが0.25ミクロンプロセスで、1.6Vとしていることから考えると、この電圧は上限に近い設定ではないかと思えます。
低クロックのソケット版は、1.6Vになるようなので、スロット版はオーバースペックなのかも知れません。
しかし、600Eは発熱がたいへん少なく、一般的な市販のヒートシンクで
810MHzを達成できました。

《600E ClockUp 検証》

コアクロック

FSB

コア電圧

I/O電圧

結果

800MHz

133MHz

1.55V

3.2V

Bios起動のみ

800MHz

133MHz

1.60V

3.2V

常用可能

810MHz

135MHz

1.65V

3.4V

Winレジストリエラー発生

810MHz

135MHz

1.70V

3.4V

常用可能

816MHz

136MHz

1.70V〜1.85V

3.4V〜3.9V

Winレジストリエラー発生

816MHz

136MHz

1.90V《危険》

3.4V

ハング後しばらく再起動せず


わたしの600Eは、800MHz810MHz常用可能ということがわかりました。
なお、I/O電圧の変更は、わたしのメモリ(ヒュンダイTC-10P)をCL2で動作させる為の措置であり、

Coppermineの特性向上が目的ではありません。
むしろ、
CoppermineではI/O電圧が上がると不安定になるような印象を受けました。

CMID810.gif

ClockUpを検証して判ったことは、コア電圧の変更によって特性向上が見とめられたのが、810MHz動作させるため、
1.65V→1.70Vに変更した場合のみだったことで、コア電圧の昇圧があまり効果が無いことを示します。
これは、もともと1.65Vというのが、オーバースペックな設定であることを意味するものかも知れません。
ちなみに、1.90Vでは瀕死の状態になり、かなり危険な匂いがします。


《主要ベンチ》

HDBENCH2.6-CPU

600E@810はなんとも凄いスコアです。
このベンチは、コアの特性xクロック数に比例した結果を示す傾向があります。
600E@504のダウンクロックの結果も載せていますが、Intel系は横一線なので、コアの変更は無いようです。
また、同一クロックではAthlonがアタマ一つ抜け出ていることから、Athlon810があれば、
Coppermineより
速いであろうことは想像できます。


CMHD.gif

整数演算

浮動小数点

Coppermine 600E@810

52168

65739

Athlon 650

41967

57092

Athlon 600

38710

52745

Coppermine 600E

38662

48722

PentiumIII 450600

38712

48779

Athlon 500

32302

44412

Coppermine 600E@504

32458

40901

PentiumIII 450504

32379

40802

Celeron 300A@504

32463

40917



CPUMark99

このベンチは、キャッシュと、メインメモリのスピードが大きく影響する傾向があります。
ここは同クロックのIntelに20パーセントのアドバンテージを持っていたAthlonにどこまで迫れるかが見所です。


なんと、Cuppermineは同クロックのAthlonと肩を並べました。
高性能なL2が、Athlonの128KBものL1の優位性を薄れさせてしまったようです。


CMCPU99.gif

Coppermine 600E@810

76.6

Athlon 650

58.9

Athlon 600

56.1

Coppermine 600E

56.7

PentiumIII 450600

47.6

Athlon 500

47.5

Coppermine 600E@504

47.1

PentiumIII 450504

39.2

Celeron 300A@504

41.5



FPUWinMark

このベンチは、従来のCPUでは、HDBENCHのFPUと同じ傾向にあり、キャッシュの影響が少ないようです。
CoppermineのL2の優位性は、ここでも現れるでしょうか。

な、なんと、またまたCoppermineは同クロックのAthlonと肩を並べています。
優れたL2の、恩恵を感じさせられます。


CMFPU.gif

Coppermine 600E@810

4370

Athlon 650

3540

Athlon 600

3260

Coppermine 600E

3240

PentiumIII 450600

3080

Athlon 500

2720

Coppermine 600E@504

2720

PentiumIII 450504

2570

Celeron 300A@504

2690



SuperPI(104万桁)

ほぼ、クロック比の結果が出ました。

Coppermine 600E@810
CMPAI810.gif

Coppermine 600E
CMPAI600.gif



CORTEST/99

わたしのメモリ(ヒュンダイTC-10P)は、810MHz時もCL2で動作するので、これもクロック比の結果となっています。

Coppermine 600E@810
CMCOR810.gif

Coppermine 600E
CMCOR600.gif


《結論》

チップセットの本命i820やRIMMが無い時点で、結論を出すわけにもいきませんが、一時、Athlonに差をつけられた
IntelCPUが
Coppermineで再び同じ土俵に戻って来たという印象です。
Athlonは今のところ発熱・大電流という課題を持っており、電源周りや冷却を考えると、使いやすさで
Coppermine
上回っていると言えます。(Athlonはまだまだ能力を出し切っていないと思われますが)


よくわからない点もあります。
わたしの環境では、DirectXがまともに走るのが700MHzまでなのです。
FSBクロック、AGPクロック、SSEロジック、ビデオカード、Bios・・問題は色々考えられますが、
今のところよくわかりません。ここは状況が変わるまで、「
よくわからない」ことにします(^^;

99.11.19ぐうさんの情報により、AGPアパーチャサイズを小さくすると、3Dが安定しました。
600E@800、BF6、GeForceの結果です。 
64MB:3D壊滅状態
32MB:3D時々フリーズ

16MB〜4MB:3DMark99MAX完走

ただし、3D関係のパフォーマンスは低下します。
(ご参考)GeForce・ AGP性能検証


現状でもCoppermineは、すばらしいパフォーマンスを示しています。
しかし、今後ハード/ソフトともさらに
Coppermine/Athlonの能力を引き出して行くことが楽しみです。



kiti30g.gifhttp://kiti.main.jp/