驚愕のメッセージ


2004年1月、ついに火星の真の姿が証明されるチャンスが訪れた。

NASAの二機の探査機「スピリット」と「オポチュニティ」が相次いで火星軟着陸に成功し、
NASAの公式サイトには連日最新画像がアップロードされた。

公式に発表された画像は相変わらず赤茶けた画像であったが、今回は極めて重要な情報が公開されていたのだ。
それはフィルターの情報である。探査機は左右二台のカメラに異なるフィルターを使用していた。

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立体画像を得るために、左右二つのカメラが並ぶ。
フィルターのシリンダーはLカメラが下側、Rカメラが上側に付いている。
フィルターを換えての撮影には数十秒程度の間隔があるようだ。


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このフィルターのデータから、正しいカラーが得られるのは、
光の三原色である赤(L4)、緑(L5)、青(L6)の組み合わせだけでであることが判る。


NASAの公式サイトにはこの三原色の画像がアップロードされていたのだ。
そして、その画像を合成して得られるカラー写真は、バイキング以来、NASAがひた隠していた火星の真の色を示すものなのである。


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左がNASAの公開したカラー、右が正しくRGB合成したカラーである。
二つの画像の色の違いは一目瞭然である。空も大地も赤茶けたNASAの画像に対し、
正しくRGB合成したカラーでは、青みがかった明るい空が生命の存在を予感させる。


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二つの画像を比較すると、正しくRGB合成したカラーでは地表に暗緑色がかった地域が混ざっており、
明るい空の下である種の藻類が群生しているように見える。驚くべきは空の明るさの違いだ。
塵の反射とする限り、NASAは空の色と同時に、空の明るさまでも隠さなければならなかったのだ。


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440メートル先の海洋に着陸カプセルが浮ぶ!?
果てしなく広がるブルーのメリディアニ・プレヌム台地は非常に平坦で水平線を連想させる。
しかし、NASAは茶色の平原に着陸カプセルを発見することで、大地を印象付けつつ、水域の可能性を暗に否定していることに注意。
青い色も青い理由も決して公開されることは無いのだろう。

これらの画像に共通するのは、青みがかった明るい空である。そこには今まで見せ続けられてきた赤い空はどこにも見られない。

今回のNASAの情報公開の動きは実に奇妙だ。
フィルターの情報も三原色のファイルのコードも初めは公開されていなかった。
しかし、インターネットを通じ、世界中で何人もの人が正しい三原色の組み合わせに辿り着き、独自の合成を試た画像を公開し始めた。
そしてNASAが情報公開に踏み切った。そのページの解説は実にシンプルで意味深いものである。

「以下は、マーズ・エクスポレーション・ローバー・ミッションに関連した27文字のファイル名を解読し、立体画像やカラー写真を構築し、
写真がいつ、どこで得られたか断定するための情報です。エンジョイ!」驚くべきは最後の一言である。
「エンジョイ!」NASAはこの一言に何を込めているのであろうか。

NASAは火星探査の成果として、大気圧を地球の150分の1、気温はドライアイスの氷点並みとし、
真の火星の色を隠し続けるという一連の情報で「火星は赤一色の世界で人はもちろん、
一切の生命が存在しない世界である」という意識を我々に植え付けてきた。

しかし、ここに来て何故か火星の本当の色を知るチャンスを与えて来たのである。
これはNASA内部で大きな方向転換があったと考えざるを得ない。
「火星の空が赤くない」ことは、7ヘクトパスカルとされる火星の大気圧のデータの矛盾を証明する決め手となり得るからだ。
本当の色を公開するということは、NASA自らが大気圧データの誤りをも認めることなのである。

今を遡る1976年7月20日、バイキング1号から送られてきた火星の最初のカラー写真はカール・セーガン博士により記者会見で示された。
そこには火星の大気のデータを元に、科学者やスペースアーティストが長年思い描いていた漆黒の空とは全く異なる、
普段見慣れた明るく青い空が写し出されていた。

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最初に公開された火星の青い空。多くの人はこれを見れば地球に近い環境を直感するに違いない。
が、しかし翌日には赤一色に修正されてしまった。


記者会見に立ち会った科学ジャーナリスト、エリック・バージェンス氏は著書「火星のすべて」の中でこう述べている。
「おおよその色彩はいくらかの緑がかった地域と堆積物を伴った赤みがかった土壌と岩石であった。
写真は青い空も写していたがセーガン博士は、これはデータから写真を作る時の色彩混合のミスだと説明し、
火星の空の色は本当はピンク色であると述べた」記者会見に同席したジェイムス・ポラック博士は「空は地表と同等以上に明るいが、
私は・・・・空の色は・・・・基本的にはどれだけ土壌粒子があるか、局所的な塵よりも、全体的に広がった塵が見えているものと思う。
氷の粒子がないかぎりはほとんどの場所で空はピンクがかった色をしているであろう」

翌日、バイキング着陸船のオレンジ色のコードにあわせて色調整されたという写真は、
エリック・バージェンス氏が見た「緑の領域」も「青い空」も失われ、赤一色の世界となってしまったのだ。
アラン・ビンダー博士は次のように説明した。「この色は天文学的観測が示している色と適合するので、全く正解です。
カメラはある一箇所だけを高解像度で見ているにすぎないが、火星の他の場所にも適合すると確信してもよい」と。

これが、後々まで火星を赤い世界と言い続けるきっかけとなった歴史的な出来事のあらましである。
科学者の立場としては「測定データに基づく考察」という原則を崩すことは出来ない。
しかし、惑星探査の情報を調べるにつれて、当局にとって都合の良い火星像を作るために
「科学者の立場」を逆手に取ったデータが公表されてきた事実が明らかになって来たのだ。

火星の空はなぜ青くてはいけないのか?
地球の空が明るい主な要因は、気体分子による青い光の分散(レーリー分散)と、水蒸気による白い光の分散である。

しかし火星の大気圧は地球に例えれば高度35kmに相当する7ヘクトパスカルであり、
水蒸気は地球の乾燥した砂漠の数百分の一の割合ほどしか存在しないとされる。
実際、地球の成層圏ではレーリー分散を起こすまでの分子量が存在せず、空は暗黒である。
つまり、火星の写真に映し出されていた明るい空の色が「青い」ということは、公表されている火星のデータと全く矛盾しているのだ。
科学者にとって、これは実に頭の痛い問題であったのだ。

20世紀初頭には温暖湿潤と考えられた金星は水や一切の生命を拒む高圧灼熱地獄とされ、
運河があると言われた火星を液体の水が存在できない低圧低温の世界とされてきた。
これまで宇宙探査の歴史は、地球以外の惑星には生命が存在できる環境が無いことを積み上げてきたように思えないだろうか。

もし、バイキングの最初の写真が十分な検討期間を置いて出てきていたら、空は地上よりはるかに暗く、
漆黒の世界にされていたかも知れない。その方が、明るい空を説明するよりはるかに簡単だったろう。

しかし、バイキングでは明るい空の写真が公開されてしまい科学者は急遽明るい空に対する理由付けが必要となった。
下層大気は澄んでいるが空を青くするほどの分子量は無い。

そこで、定期的に発生して火星全土を覆いつくす大規模な砂嵐に着目した。
上昇気流に乗って高空に吹き上げられたミクロン単位の塵の一部が火星の成層圏に半永久的に留まって赤い光を反射すると考えたのである。

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火星の成層圏にあるとされる塵の層。


バイキングの記者会見で、アラン・ビンダー博士は赤い火星の世界は天文学的観測と適合すると述べた。
しかし、アポロの写真を例に見れば、月面は青みがかったグレー、またはグリーンであり、
月面上ではオレンジ色の鉱物も見つかっている。
しかし、天体望遠鏡で見た月は黄みがかった白一色の世界であり、そこにアポロの写真と同じ色を見ることはできない。
地上から観測した火星はオレンジ色に見えるが、それはあくまで惑星全体の色を見ているのであって、
着陸してみた風景の色と同じであるとは言えないのである。



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