土星の秘密・リング《99.5.23画像8》

土星には、リングがあります。
子供のころ、図鑑のイラストを見て
このリングをそばで見てみたい衝動にかられたものです。

Silust.JPG

リングが、一枚の板でないことは、以前からスペクトル観測で判っていました。
七色の太陽光特有のスペクトルが、ドップラー効果で内側ほど大きくズレていたのです。
つまり、リングは内側ほど速い・・ケプラー運動をしていることが確かめられました。


実際、リングはどのように見えるのでしょうか。
ボイジャーは分解能数百mクラスの画像を捉えています。


Sringup.JPG

この写真は、明るいAリングの端(エンケの間隙)100Km四方を写しています。
レコード版のように多数の幅数Kmのリングが規則的に並んでいるのがわかります。
非常に滑らかに見えます。
リングの中では、本当にイラストのような岩塊がごろごろしているのでしょうか・・


リングが非常に薄いということは、15年毎にリングが地球に対して真横になったとき、
地上からの観測では
完全に消失してしまうことから、以前から言われていました。
しかし、ハッブル宇宙望遠鏡ではこの淡い光のすじを捉えています。

Satrpc1.JPG

一体、リングの厚みはどれくらいなのでしょうか。
1950年代では15Km以下、1970年代では2Km以下、そしてボイジャー以降では200m以下と
観測技術に比例して薄くなっているようです。
一説では9mとも言われています。


しかし、リングはある程度の厚さを持っていないと、おかしいと思われる事象もあります。

Saturnx.JPG

土星には二種類の性質のリングがあります。

一つはこの写真で明るく見えているリングです。
隙間(カッシーニの空隙)の内側のBリングと、外側のAリングで、このリングはボイジャーの観測で
電波を通さず、厚さが確認できなかったものです。
また、光りも通さないため、土星本体に黒い影を落とし逆光では黒く見えます。


Snega.JPG

電波を通さない性質から、リングを構成する粒子は平均10mと推測されていますが、それが
光りを完全に遮断するには相当な密度と、厚みが必要に思えます。


そしてもう一つ、光りに対し半透明で、土星本体が透けて見えるものがあります。
以前からBリングのさらに内側のCリングが知られていましたが、ボイジャーではさらにAリングの外側に
Gリング、Eリングを発見しました。
これらは逆光では光りを散乱させ明るく、順光では暗く見えます。
その性質から、粒子はミクロンクラスで、密度は希薄と考えられています。
実際、ボイジャーの軌道はEリングと交差しており、Eリング通過の際に何も損傷が無かったようです。


しかし、この見えないリングにもかなりの厚みがあると思われる写真があります。
Eリングの内側にある衛星上を、リングの影が通過する連続写真です。


S11_2.jpg S11_1.jpg

13分間隔で撮られた衛星エピメシウスの写真では、中央部からリングの影が端に移動する様子がわかります。
この衛星は直径が約70Kmであるため、影の幅は5Kmほどでしょうか。


Aリングの外側に、ある程度の厚みを持った光りを弱める性質のリングがあるということは、
真横から見たAリングの光りはGリングとEリングにかき消されている可能性があり、リングの消失から、
リングが非常に薄いと考えるのは正しくないかも知れません。


もう一つ別の謎ですが、地上の観測では、土星の影の部分でリングが燐光を発していると言う説がありました。
しかし、ボイジャーの観測では確認されていません。


Saturnb.JPG

この写真では、影の部分の土星本体がリングの反射光で仄かに照らされているのがわかりますが、
リング自体は全く光りを失っているようです。



将来、探査機がリングとランデブーする計画があるようです。
その時、イラストの世界がどのように再現されるのか・・すごく待ち遠しいですね。



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