月の秘密・大気の行方《99.5.23画像7》

月は真空の世界・・ということは周知の事実です。
しかし以前から、ガスや水蒸気の噴出によると思われる、局所的大気の存在は
考えられていました。


1958年、ロシアのゴジレフは、アルフォンサスの中心山から、赤く輝く2千度の
ガスが噴出されたことを、スペクトル写真で確認したといいます。



Alufons.JPG

アルフォンサスの全景です。
この中心山からガスが確認されたと言いますが、外輪山近く、黒い染みのような
(いかにもガスを出しそうな)小クレータが目を引きます。


左のクレータと中心山のクローズアップ。


AlfonsL.JPG

クレータと中心山は、溝で結ばれていて、その中ほどにも黒い染みを持つ
小クレータが存在しています。
この染みの正体は何でしょうか。
たとえば、アルフォンサスが形成された際の黒い物質の落下による二次クレータ
と考えると、数が限られていることと、クレータの中だけに存在する説明が出来ません。
そして、二次クレータは多くの場合、広範囲に飛散するのです。
やはり何らかのガスを伴って黒い物質が噴出したと考えるのがよさそうです。



月面で最も変化現象の報告されている、アリスタルコスヘロドトス。


Tanix.JPG

左は月面で最も明るい反射をもつアリスタルコス。
ここから発生した蒸気のようなものが谷を乗り越えて広がるのが観測されています。
よく見るとこの谷も、くぼ地から発しています。
蒸気の噴出と共に、何かの流出が長い年月をかけて浸食したものでしょうか。



そして、アポロの軌道船から。


Taiki.JPG

これは、月面を広範囲に覆うモヤとして、この手の話には引っ張り出されるものです。
これに対する公式なコメントも否定もなされていないので、真偽のほどはわかりません。
フィルムの感光も考えられますが、そのような写真を公開するものでしょうか。



ところで、局所的な大気はどこへ行くのでしょうか。
月の重力は地球の6分の1です。従って、大気の半減高度は30Kmとなります。
これは、どういうことかというと、30Kmで2分の1、60Kmで4分の1・・と、地球では既に
宇宙空間といえる高度においても、濃いガスが存在できることを意味しています。


そして、それを裏付ける写真があります。


Hakumei1.JPG

月の背後に太陽があり、月の右上は地球に照らされています。(明るい星は金星)
月の上空が背後の太陽光で光って見えます。
真空の天体であれば、起こり得ない現象に思えます。


一つ考えられるのは、黄道光(惑星の公転面に散在するガスや微粒子の光り)ですが、
そうであれば、金星から地球の方に細長く伸びるはずです。



そしてもう一枚。


Hakumei2.JPG

地球照が無く、金星の大きさから比較的短時間の露光であると思われるこの写真
にも拡散された光りが見られます。
星が写らない程度の露光で、黄道光をハッキリ捉えることは出来ないでしょう。


ちなみに月面から日没直後を捉えたサーベィヤーの写真でも、夕焼けのような光りが
確認されています。



YuyakeS1.JPG


月面から逃げた大気は、月面を真空にしながらも、月面の上空すぐ傍を長期間漂って
いるのかも知れません。



kiti30g.gifhttp://kiti.main.jp/